sun

cosmos on the table

artist

小島ゆり/漆

2021.03.31

小島ゆり/漆

    

1975年島根県松江市にて、松江藩御抱え塗師・蒔絵師、小島家直系十二代目として生まれる。父七代小島漆壺斎(十一代目)に師事。初代は、寛永16年(1639年)に京都より松江藩塗師棟梁として招聘され、以降代々松江藩御抱え塗師となる。2002年、Yuri Kojimaブランドを設立。大手広告企業にて、商品企画等などを約10年行う。2010年、Yuri Kojima 漆 Design設立。以後、カルーゼル・ド・ルーブル(仏・パリ)など国内外の展示会に出展。ギャラリー、百貨店、などにて展示販売を行っている。


なぜ職人になられたのですか?
            

江戸時代初期から380年以上漆塗りをしている家の一人っ子だったので、仕事の選択肢として漆塗りがありました。とりあえず漆の技法を父親から教えてもらいましたが、やり始めたらいくらでも追求の仕様があって飽きなくて面白いと思い続けています。そして、仕事を始めたら、漆を知らない人がとても多いことに気付き、とにかく漆を知ってもらう活動をまずしないといけないと思いました。漆文化が消えてなくなるのはとても惜しいと思ったためです。


職人になってよかったこと、大変なことをそれぞれ教えてください。
            

よかったことは、とにかく仕事に飽きることがないことです。技法の上達は、やはり回数をこなさないと上手くならないので、まだまだ永遠にやらねばならないです。また、漆が、温度や湿度だけでなく、漆の製造年や製造所、種類によっても、仕上がりが全く変わるので、毎日漆の塗りの状態にドキドキさせられています。


大変なことは、やることがたくさんあることです。漆の作品づくりでも工程数が多かったり、漆が固まるのに何日もかかったりして、時間がかかることもあります。それ以外に、漆を広めたい、もっと世の中の人に知ってほしいと思うと、体験ワークショップを開催したり、漆塗りや金継ぎ教室を開講したり、コラボで制作したりしています。一人でできることは限られているので、協業で取り組んでいます。


誇れる技術について教えて下さい。
            

斬新な技法を思い付くことです。今やっている技法は、職人的には未完成とされたり、不完全とされていたものですが、それをあえてやってみています。漆工芸は技法の伝承が事細かくされている部分がありますが、なぜその作業をしなければならないかということをわからないまま教わりがちです。また、なぜこの仕上がりは良しとされ、この仕上がりはよろしくないとされるのか、ということも、実は時代背景によるものも多く、現代は変わってきているように思います。例えば、陶器では面白いとされる釉薬の「垂れ」、「指の跡」などは、漆では「不良」とされますが、面白いと思うのであえてやってみています。


制作時に意識していることや大切にしていることはありますか?
            

楽しい気分で漆塗りをすることです。つらい、苦しい、と思いながら制作すると、つらさが作品に表れてしまいます。手に取った人に幸せな気分になってほしくて制作しているのに、逆効果になります。実際には、全く同じ柄は作らないのと、温度と湿度によって、漆の色味が変化するので、今回はどんな仕上がりになるんだろうと、毎回ドキドキワクワクしながら制作しています。


制作の上でこだわりを教えて下さい。
            

再現性のない、オンリーワンの作品を1点1点制作してお届けすることです。あえて1点1点違うところの面白味をお届けしたいなと思っています。もともと、材料の木地の木目模様も、1点1点違い、それぞれの面白味があります。あえてそれを強調する「拭き漆(ふきうるし)」という技法も使っています。また、1点1点、5回程度手塗りで漆を塗っていますが、その「刷毛目」や、塗面を平らにするために炭で砥いでいますが、その「砥ぎ跡」をあえて残して、1点1点のデザインにしています。実は、この技法だと、漆器を使用しているうちにできる傷やシミが目立たないので、ストレスなく気楽に漆器を扱っていただけるのです。


ご覧いただいている方へのメッセージをお願いします
            

お食事の時間が、もっと楽しくもっと美味しくなるように、日々の生活が、ちょっと満たされた気分になるように、「漆(うるし)」でお手伝いができればいいなと思って制作しています。「漆(うるし)」は、意外と軽くて丈夫で使いやすいということをもっと知っていただけたら嬉しいなと思います。そして、漆器ははげたり欠けたりしても、修理できるということもお伝えしておきたいです。もし、お家にしまい込んである漆器がありましたら、お正月のときだけでも、ぜひ出して使ってあげてくださいませ。


all